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性暴力案件关注组

王丹氏による性加害疑惑:事件のタイムライン、台北地方検察署の不起訴処分書、そして李元鈞氏が語る真実

Table of Contents

本文章では、王丹氏が告発された性加害疑惑事件のタイムライン、台北地方検察署による不起訴処分書を詳細に辿る。加えて、被害者である李元鈞氏本人がSNSに投稿した内容、及び『新新聞』による李元鈞氏への取材(記事作者より許諾済み)の翻訳を掲載した。
日本語訳者:白石、小杨


# 王丹のセクハラ事件のタイムライン

  • 2023年6月2日
    李元钧(リー・ユエンジュン)が、2014年にニューヨークのあるホテルで王丹(ワン・ダン)から「強引なキス」と「強姦未遂」の被害を受けたと公に告発した。王丹は、この告発は政治的な目的に基づくものであり、事実無根だと否定した。
  • 2023年6月3日
    国立清華大学で修士号をとった作家の徐豪谦(シュー・ハオチェン)が、13年前に王丹から不適切な接触を受けたと告発し、王氏が「常習的な性加害者」だと指摘した。王丹は、これらの告発は彼自身の認識や記憶と大きく食い違っていると反論した。
  • 2023年6月4日
    李元钧が記者会見を開き、王丹に対し、6月6日までに説明と公的謝罪を行うように要求し、応じない場合は王丹を提訴すると宣言した。清華大学人文社会学科の学会は、被害者の声の支持、該当教員の授業の一時停止などの措置で学生の権利を守るように、大学側に向けて声明を発表した。大学側は、王丹が性別平等法に違反した疑いがあるとし、被害者に調査申請の意思を確認する意向を示し、違反が認定された場合は、王丹が台湾国内のすべての大学での教職を禁止すると表明した。
  • 2023年6月7日
    李元钧が正式に王丹を「強制性交未遂」の容疑で告訴した。案件は台北地方検察署に受理され、司法調査が始まった。清華大学は、王丹の兼任客員助教授としての任用を停止し、調査範囲を拡大した。王丹の在職期間中である2010〜2017年、また2022〜2023年の間の学生に連絡を取り、申し立ての受付も開始した。
  • 2023年6月14日
    台北地方検察署は、王丹が性的な自主を侵害した疑いがあるとして、事件を「他字案」として捜査中とすると発表した。
  • 2023年7月20日
    ドイツのメディア「ドイチェ・ヴェレ」が、少なくともさらに4人が王丹による様々な程度のセクハラを告発していると報道した。そのうちの1人は、王の行為が「隙を狙った性交」に当たる可能性があるとして、清華大学と当時通っていた大学に資料を提出した。また、一人のメディア関係者は、王丹が「民主運動の肩書」を利用して若い男性に対しセクハラを行うことを何度も目撃したと述べた。王丹は、当該事件は司法手続きに入り、今後は応答しないと表明した。
  • 2024年5月12日
    李元钧がSNSの投稿で、台北地検からの「不起訴処分書」を受け取ったと報告しつつ、事件は確かに発生したことを強調した。清華大学の性別平等教育委員会もセクハラの事実を認定し、李自身はできる限りの声を上げた。また李は、自分の事件を通じて、身体的境界や積極的な性的同意の重要性を社会的に訴えたいと述べた。王丹は一方で、検察の「証拠不十分」という理由で不起訴となったことを強調した。検察が王の証拠を却下したことや、事件が米国で起きたため、台湾には管轄権がないといった点に触れず、もっぱら「相手側の証拠不足」を強調した。

# 李元钧のSNSでの投稿内容(日本語訳)

原文は以下のリンクをご参照ください。
https://www.facebook.com/permalink.php/?story_fbid=2445619058970544&id=100005674205400

王丹に対する告訴の結果:不起訴。

事件が起きてからもうすぐ1年になりますが、今日、弁護士から不起訴処分の書面が届いたと連絡がありました。 それを読んで、検察も司法も、かなり頑張ったとは思います。しかしこの結果では、これ以上何かできることもないし、再び申し立てるつもりもありません。

ただ、ひとつはっきり言っておきたいのは、検察が不起訴としたとはいえ、この事件が起きていなかったというわけではありません。

清華大学の性別平等教育委員会は、最終的にはセクシャルハラスメントが成立すると認定しましたし、不起訴処分の文書にも「強制わいせつの嫌疑があるが、さまざまな事情により起訴は困難」と明記されています。

このことは確かに起きたのです。私は確実に侵害され、被害を受けました。そして、力を尽くして声を上げました。

この事件を通して、他者の身体的境界を尊重することは極めて重要で、真剣に受け止めるべきことであり、どんな状況、身分や立場、あるいは関係性においても、常に積極的な同意を求める必要があるということを、すべての人に気づいてほしいです。

昔は「少し触るくらい、軽くキスするくらい大したことじゃない」と考える人もいましたが、そのような時代錯誤の考えは、もはや現在の社会や文化には存在すべきではありません。

最後に、この道を共に歩んでくれたすべての方々に感謝します。心身ともに支えてくれた家族とパートナーの黄聖澧に感謝します。この間、積極的に力を貸してくれた林亮君議員に感謝します。そして、世界中で自主権と平等のために闘っているすべての人々に感謝します。今日から、私はこの事件を手放し、新たな人生に向かいます。

そして、王丹さん──ここでさようならということにしましょう。もうFacebookの友達申請をしないでください。

# 台北地方検察署による不起訴処分書(日本語訳)

以下は李元鈞氏のSNS投稿に添付されていた不起訴処分書の画像の翻訳です。原文は上述のリンクをご参照ください。

(四)裁判所は、被告に対して裁判権がない場合、不起訴処分とすべきであり、これは刑事訴訟法第252条第7項に規定されている。また、中華民国の領域外において、中華民国国民以外の外国人が犯罪を犯した場合、刑法第5条、第6条の適用がある場合を除き、または前述の2条以外の罪を犯し、かつその最も軽い法定刑が3年以上の有期懲役に該当する場合を除き、我が国の裁判所はこれに対する裁判権を持たない。この点は刑法第3条、第5条、第7条及び第8条の規定から明らかである。

本件では、被告に対する原告の主張の経緯、事件発生後に原告が証人に対して被告にキスされたことを伝えた事実【添付表の会話記録】、事件発生してから、原告が数年間にわたり、毎年6月4日前後にFacebookで投稿を行い、心情を吐露していたこと―【理由三(三)のFacebook投稿】といった事情を総合的に考慮し、被告の弁明、証人の証言を踏まえると【理由四(一)~(三)】を、被告にとって有利な証拠として採用しない。

さらに、本件は被告が教員を務めていた国立〇〇大学のジェンダー平等教育委員会による調査を経て、被告が原告に強制的にキスをした事実が認定され、セクシュアル・ハラスメント行為が成立したと判断された。本件では、被告が告訴人の意に反して強引にキスをした行為があり、強制わいせつ罪の嫌疑が認められるものの、本件の被告は中華民国国民ではなく、告訴人が主張する犯罪行為の発生場所は米国である。したがって、その事実が真実であったとしても、刑法第224条に規定される強制わいせつ罪は、最も軽い法定刑が3年以上の有期懲役には該当せず、刑法の関連条文及びその説明に依拠すると、我が国は被告に対する裁判権を持たないため、不起訴処分とすべきである。

五、刑事訴訟法第252条第7項及び第10項の規定に基づき、本件は不起訴処分とする。

中華民国 113年4月11日
裁判官 於盼盼
告訴人は本件の不起訴処分書を受領後、10日以内に書面にて不服の理由を述べることができ、それに基づき、原検察官が台湾高等検察署の検察長に対し再議を申請することができる。
本件の証明は原本と相違なし。
中華民国 113年5月2日 書記官 鄭 和

# 『新新聞』による李元鈞氏への取材(日本語訳)

本稿は『新新聞』の記事の訳文であり、原文はこちらをご参照ください。
李元鈞へのインタビュー:検察が王丹氏の強姦未遂を認定しなかったことに理解を示し、「一部の事実を信じるだけでも十分だ」

王丹によるセクシャル・ハラスメントを公に告発してから約1年、李元鈞(リー・ユェンジュン)氏は検察から「不起訴処分書」を受け取った。

「もちろん、自分の期待とギャップがあるが、仕方がない。手元にある証拠では彼を起訴するには足りなかった」と、李元鈞は『新新聞』の取材に語る。「でも、検察官が『この事件は起きた』と信じてくれた。それだけで十分です。少なくとも私の独り言じゃなかったということです」。

台北地検の「不起訴処分書」によれば、検察官は李元鈞氏の証言、事件直後に知人に語ったチャット記録、毎年の6月4日ごろにトラウマを抱えた李元鈞氏のFacebookの投稿などを考え、「王丹が強引にキスをした行為は実際に発生したと認定できる」とし、強制わいせつの疑いがあると判断した。しかし、この罪は中華民国(台湾)籍を持たない外国人が国外で犯罪した場合には管轄権が及ばないため、最終的に不起訴とした。

2023年6月2日、台湾で盛り上がった#MeTooの波を受け、政治関係者の李元鈞氏が、天安門事件の学生リーダーであった王丹によるセクシャル・ハラスメントを告発した。これが中国民主化運動圏における#MeToo運動の火種となり、民主化運動内部の家父長制文化やミソジニー文化への批判を引き起こした。これに対し、王丹氏は「セクシャル・ハラスメントなど完全に事実無根」と反論し、法廷で争う構えを見せた。

今回の「不起訴」決定を受け、李元鈞氏が落胆したのは「管轄権がないための不起訴」という部分ではなく、当初訴えた「強制性交罪」を認定されなかった部分だ。その背景には、司法機関が「強引なキスはあった」と認定しつつも、性器の挿入未遂の嫌疑があると認定しなかった。検察の「強制わいせつの疑いがあるが、管轄権がない」という結論は、李氏が求めた「強制性交未遂罪の起訴」とはズレがある。

「検察官には検察官なりの判断がある。無理やりに、裁判官が認める可能性が低い罪名で起訴してもらうのは現実的じゃない」と李元鈞氏は語る。「もし、王丹が私をレイプしようとしたと皆に認めさせようと執着し続けたら、私は永遠に前に進めないと思う」。

「私のできることはすべてやり切った。どの段階においても手を抜かず、逃げなかった。だから、もうこれでいい」とも話す。

処分書では、検察官は李元鈞氏の証言を重視した一方で、王丹側の証言や証人については「王丹に有利な証拠としては採用しない」と判断した。検察側が王丹氏の証拠の有効性を全般に信用していないにかかわらず、王丹氏は「証拠不十分などを理由に検察が不起訴処分を下した」と声明し、自分の証拠が却下された点には触れず、相手側の証拠が不足しているかのようなことを発表した。

声明は強硬だったものの、王丹氏はその後も李元鈞氏にFacebookで友達申請を何度も送っていた。「王丹さん、ここでさようならということにしましょう。もう私のFacebookに友達申請しないでください」と、李氏は自分のFacebookで揶揄した。

1年前、李元鈞氏は告発の際にこう語った。ホテルで王丹氏は彼の背後から強引に抱きしめ、無理やりにキスをし、彼をベッドに押し倒し、ズボンのファスナーを下ろそうとした。李氏は慌てて「肛門の手術をしたばかりだから、やめてくれ」と訴え、そこで暴行は止まった。それ以来、毎年6月4日が近づくと「王丹の顔や話し方を見るだけで、あの時に彼が私にしていたことがフラッシュバックし、吐き気がするし、呼吸まで困難になる」と言う。

告発してからの1年間で、李元鈞氏は「王丹が台湾に戻って訴訟に応じたと知り、電車の中で震えが止まらなかった」状態から、「彼がどう自己を弁護しようとしているかを冷静に読む」までに変わった。「スポットライトの下で記者会見を開いた」日々から、「街を歩いても誰にも気付かれないような普通の生活」に戻ったということで、「今の普通で穏やかな暮らしが好き」と語る。

「今日、私はこの事件を手放し、新しい人生へ進んでいける」と、李氏は記した。


以下は『新新聞』と李元鈞氏の対話である。

新新聞:検察官は強制キスの事実のみ認め、強姦未遂は認めませんでした。どう考えられましたか。

李元鈞:証拠を提出しましたが、「彼がレイプしようとする」と証明するために作為的に証拠を集めたわけではなく、性的暴行を受けた経験を語っただけです。不起訴の結果を受け取って、正直、嬉しいのか悲しいのか分かりません。ただ、皆さんは少なくとも一部の事実を信じて、この事件は私の妄想ではなかったと信じてもらえました。それだけで十分です。

検察官は「管轄権がない」という理由で王丹氏を不起訴としましたが、わざわざ「王丹が強引にキスした行為はあった」という一文を加え、強制わいせつ行為があった事実を認定しました。本来、言及する必要のない点まで強調してくれたのです。「被告が告訴人の意志に反し、強引にキスに及んだ行為があったと認められる余地がある」とあり、いささか回りくどい法律用語ではありますが、つまり検察はセクシュアル・ハラスメントの事実を信じているのだと、皆さんもご理解いただけるでしょう。

新新聞:司法機関の認定は、世間の認定とどう違いますか?

李元鈞:「錨を下ろした」ような感覚です。独立した第三者であり、公共的で権威のある機関が、この事件が実際に起きたと認定し、もはや私一人の物語ではなく、相手も逃れられない事実になりました。

新新聞:検察があなたの言う事実の一部しか認めなかったことに、無力感と遺憾を感じますか?

李元鈞:むしろ、検察官たちを理解しました。証拠が不足していたので、強姦未遂を認定するのは困難だと分かっていました。調査に関わった皆さんに感謝しています。特に後半は、単なるセクシュアル・ハラスメント案件を超えて、民主運動や中国共産党など政治的な要素も絡んできて、いろいろな事情があり、それでも尽力してくれたと信じています。

新新聞:被害者であり申立人であるあなたが、検察に配慮するのですか?

李元鈞:それが私の性格ですね(笑)。人を困らせるのが嫌です。王丹に対しても、最初はただ非公開の謝罪を求めただけでした。彼がカミングアウトしていないことや、歴史的な重みのある人物であることを考慮して、彼にも配慮していました。加害者でありながら、最初は彼に退くチャンスを与えました。でも、彼がそれを拒んだのだから、私もやむを得ず進むしかなかったのです。

新新聞:証拠が不足しているため、検察は強姦未遂の事実を認定できません。証拠不足は被害者の責任ではないのに、結果として負担を負わされます。この矛盾をどう思いますか?

李元鈞:セクシャル・ハラスメントは「ブラックボックス」です。この箱をどう開けるのか、私にも分かりません。被害者が常に録音機を持ち歩き、証拠を残す準備をするのは非現実的です。被害に遭うと、本能的な逃避反応もあり、すぐに通報できず、心の奥に押し込めてしまうことが多いです。私の場合は、加害者が毎年の6月4日に記念されるため、「自分は定期的に症状が出る」と自嘲していました。

司法上、証拠の不足により認定が難しい事実をどう補うかについて、台湾には様々な機関がセクハラの申立てや審査の仕組みを備えています。私のケースでも、国立清華大学のジェンダー平等教育委員会が調査し、双方の証言確認などの手続きを実施し、罰金などの強制的な制裁措置も設けられました。これが司法の限界をある程度補ったと思います。

新新聞:司法手続きを終えて、今の思いは?

李元鈞:今、「セクハラのえん罪を恐れる」という声がよく聞かれますが、私自身の体験から言えば、特に自分より社会的な地位や名声がある相手を告発するのは本当に大変です。膨大な証拠を用意し、何度も何度も自分の被害体験を語り、機関からの調査を受け、世間からの中傷や攻撃にも向き合わねばならないため、こんなに簡単なことじゃないと知ってほしいです。

新新聞:この1年の生活はどうでしたか?

李元鈞:告発直後の2か月は本当に混乱していて、多くの人がこの事件に注目し、中国共産党のスパイだと攻撃されたりしました。でも、訴訟を起こした後、議論が徐々に収まりました。私自身も「王丹のセクハラを告発した人」というラベルに自分を縛りたくなかったです。

今は普通の生活に戻り、穏やかに日々を過ごしています。この事件の影響で公共の場に出るのが怖くなったというのはありません。立法院の前で抗議活動をしたときも顔を隠さず発言しました。数人に気付かれたかもしれませんが、特に何も起こらなかった。とても嬉しかったです。私はただの一般人ですから。